3.2 リサイクル資材の環境安全性評価の考え方

3.2.1 リサイクル製品の環境安全性評価の基本

土壌の汚染に係る環境基準についての一部改正について」(環水土第44号 平成13年3月28日)には、「路盤材、土木用地盤改良材等の再利用物の安全性の評価については、土壌環境基準及びその測定方法の援用が行われているが、現状有姿や利用形態に応じた適切な評価が行われる必要があると考えており、貴都道府県等においてこのような援用が行われている場合には、現状有姿や利用形態に応じた適切な評価につき十分留意されるようお願いしたい。」と記載されています。

つまり、リサイクル製品(再利用物)の安全性評価は、実際に製品が使用される状況を反映して行う必要があるということです。例えば、下水汚泥焼却灰を利用した焼成レンガの安全性評価は、原料としての下水汚泥焼却灰ではなく、製品としての焼成レンガを対象とした溶出試験等により評価されるべきものであることは明らかです。

→ 土壌の汚染に係る環境基準についての一部改正について

3.2.2 下水汚泥焼却灰や溶融スラグ(再生材料)の利用形態について

下水汚泥焼却灰や溶融スラグを建設資材として利用する場合は、大きく分けて下の3とおりのケースが考えられます。

1. 原料をそのままリサイクル製品として利用するケース

2. 原料と他の資材を混合してリサイクル製品を製造・利用するケース

3. 原料または、原料と他の資材を混合したものを焼成し、リサイクル製品として利用するケース

各ケースを簡単に図示すると下のとおりになり、A)の場合のみ、原料とリサイクル製品が同一となり、原料を安全性評価の対象としても(1)に示した基本と整合性があります。

A) 原料 = リサイクル製品
B) 原料+他の資材 = リサイクル製品
C) <原料+他の資材> → 焼成 → リサイクル製品

3.2.3 溶融スラグ試験方法のJIS規格について

スラグ類の化学物質試験方法のJIS規格である、JIS K0058-1(溶出試験方法)及びJIS K0058-2(含有量試験方法)が、平成17年3月20日に制定されました。これらは、鉄鋼スラグ、非鉄スラグ、廃棄物溶融スラグなどのスラグの有効利用に際して、人及び環境への安全性の確認のため適用できる統一的な試験方法を規定したものです。JIS K0058-1(溶出試験方法)が、環境に対しての安全性評価、JIS K0058-2(含有量試験方法)が、人への直接摂取を想定した安全性評価の試験方法として位置づけられます。

なお、ここでは「利用有姿」という言葉が使用されており、「利用有姿」とは、製造工程から排出された後、粒度をそろえるなどの処理を行って実際に使用するときとほぼ同じにしたものや、コンクリートなどに混合して成型した製品、又は製品と同じ配合で作成した品質管理用の供試体を示すことが記載されています。

ただし、実際には、溶融スラグ(原料)を製造する下水道事業者等が、溶融スラグ(原料)を試料とした溶出試験及び含有量試験を実施しているケースが多いと考えられます。

3.2.4 溶融スラグのJIS規格について

平成18年7月20日に、「一般廃棄物、下水汚泥又はそれらの焼却灰を溶融固化したコンクリート用溶融スラグ骨材(JIS A5031)」及び「一般廃棄物、下水汚泥又はそれらの焼却灰を溶融固化した道路用溶融スラグ(JIS A5032)」が制定されました。これらは、溶融スラグをコンクリート骨材、加熱アスファルト混合物用骨材、路盤材等に利用する場合の品質、試験方法、検査、表示及び報告並びにコンクリートへの適用範囲を規定するものです。

溶融スラグのJIS規格においては、溶融スラグ骨材単体の安全品質レベルを規定することになるため、含有量試験及び溶出試験とも、溶融スラグ骨材を供試試料としていますが、溶出試験の際には、試料を粉砕して粒径を小さくすることなく、利用形態の有姿とすることが明記されています。

3.2.5 平成20年度のグリーン購入法判断基準の改定案について

平成20年度のグリーン購入法における基本方針の見直しにおいて、環境省より下水汚泥を用いたリサイクル資材(再生材料を用いた舗装用ブロック、再生材料を用いた舗装用ブロック類、陶磁器質タイル)における判断基準の改定案が提示されました。

その改定内容は、新たに【判断基準】「再生材料における重金属等有物質の含有及び溶出について土壌汚染対策法及び土壌汚染に係わる環境基準(環告46号)を満たすこと。」が追加され、原材料ごとの規定としたものです。従来は、【配慮事項】「重金属等有害物質の含有や、施工時及び使用時に雨水等による重金属等有害物質の溶出について、土壌の汚染に係る環境基準等に照らして問題がないこと」と製品としての基準となっていました。

この改定案に則した取扱いでは、下水汚泥焼却灰と建設残土を混合した埋め戻し材を最終製品としている場合も、下水汚泥焼却灰を原料として焼成レンガを製造している場合も、再生材料(原料)となる下水汚泥焼却灰が、溶出基準を満たす必要があることになります。特に焼成レンガの場合は、焼成により、焼却灰中のシリカ・アルミナ・水酸化物等が熱分解等によりガラス化し結合固化され、重金属の溶出が抑えられることが知られています。

したがって、この見直し案は、前述したように、「リサイクル製品の環境安全性は、現状有姿や利用形態に応じた適切な評価により行われるべきである」という基本的な考え方と矛盾したものです。

3.2.6 平成20年度のグリーン購入法判断基準の改定案への対応について

平成20年12月の下水汚泥建設資材利用促進連絡会において各委員の意見を聞いたところ、平成20年度のグリーン購入法判断基準の改定案は、環境省のH13年の通達と整合しないものであり、焼却灰の有効利用にも影響がでるため、(社)日本下水道協会から環境省に強く申し入れして欲しいとの意見で一致し、同時期に実施された環境省ホームページにおけるグリーン購入法判断基準改定案へのパブリックコメントを利用し、関係者の協力も得ながら、改定案に反対する旨の意見を出しました。

その結果、平成21年2月の段階で、焼成レンガ及びタイルについての判断基準(案)は、いったん「配慮事項」に落とした形で閣議決定となり、平成21年度にはさらに検討の上、判断基準としての規定の方法を検討することとなりました。下に、環境省のパブリックコメントにおける意見集約結果と対応方針を示したものから、当該箇所の内容を示します。

意見:再生材料を用いた舗装用ブロック及び陶磁器質タイル 対応方針 件数
「再生材料における重金属等有害物質の含有及び溶出については、土壌汚染対策法(平成14年5月29日法律第53号)及び土壌の汚染に係る環境基準(平成3年8月23日環境庁告示第46号)を満たすこと。」について、材料に対して規定するのは厳しすぎるのではないか。 ご意見を踏まえ、再生材料を用いた舗装用ブロック(焼成)及び陶磁器質タイルの原案の判断の基準3については配慮事項とした上で、判断の基準としての規定方法については平成21年度に検討することとします。 9

3.2.7 グリーン購入法判断基準の修正案の提示

平成21年6月に開催した下水汚泥建設資材利用調査専門委員会において、(独)国立環境研究所循環型社会・廃棄物研究センターや(独)土木研究所道路技術研究グループなどからの関係者にもご出席いただき、判断基準(案)に対して、以下のとおり修正案を確認し、国土交通省を通じて環境省に伝えた結果、ほぼ同じ内容が平成21年度のグリーン購入法判断基準の改定案とされました。

判断基準
土壌の汚染に係る環境基準(平成3年8月23日環境庁告示第46号)の規定に従い、2mm以下に粉砕した製品において、重金属等有害物質の溶出について問題の無いこと。

配慮事項
土壌汚染対策法(平成14年5月29日法律第53号)に関する規定に従い、2mm以下に粉砕した製品において重金属等有害物質の含有について問題の無いこと。

平成20年度の環境省の改定案において、再生資材(原料)を安全性評価の対象とされた背景には、リサイクル製品の使用時における安全性評価としては、「現状有姿や利用形態に応じた適切な評価」で問題ないが、リサイクル製品を使用したアスファルトや路盤材等が、再利用あるいは再々利用されることも想定した安全性評価が必要であるという認識があり、その方法として「原料における安全性評価」を取り入れようとしたものです。

環境省告示第18号(土壌汚染対策法に基づく溶出量試験法)、環境省告示第19号(土壌汚染対策法に基づく含有量試験法)、JIS K0058-1(溶出試験方法)、JIS K0058-2(含有量試験方法)など、各試験方法の供試検体の取扱いや、当該試験方法が、リサイクル製品の使用時や再リサイクル時の安全性を評価できるものか、検討した結果を表-7に示します。

表-7 試験方法と確認可能な安全性について((社)日本下水道協会作成)

供試検体
(試験方法)
試検の種類 リスク 安全性 考え方
使用時 再リサイクル時
製品有姿
(JISK0058-1)
(JISK0058-2)
溶出 地下水 製品使用時の安全性の確認
含有 直接摂取 有姿の直接摂取は想定できない
粉砕(0.5-5mm)
(13号)
溶出 地下水 最終処分場への投棄の基準
粉砕(2mm以下)
(46号、18号)
(19号)
溶出 地下水 粉砕検体の試験により、再リサイクル時の安全性も確認
含有 直接摂取 同上
使用時の直接摂取は想定できない

供試検体と試験の種類に対応する(確認できる)安全性について○を入れた

環境省告示第18号や環境省告示第19号試験においては、対象試料を粉砕し2mmのふるいを通過したものを供試試料とするため、製品有姿を供試検体とするより厳しい条件を課しており、これは、アスファルトやコンクリート等が、再リサイクルされる際の状況を十分反映していると考えられます。したがって、「2mm以下に粉砕した製品において、重金属等有害物質の溶出について問題の無いこと」という対案を示したものです。

 

3.2.8 リサイクル製品の環境安全性評価方法に関するまとめ

上述したように、リサイクル製品の環境安全性評価の基本は、「現状有姿や利用形態に応じた適切な評価」であり、この考え方は、下水道事業者のみならず、リサイクル製品を使用する側となる道路関係者等にも浸透されるよう配慮する必要があります。また、リサイクル後の再々利用や廃棄も含めた環境安全性評価手法については、現在関係者間で議論されている最中です。近いうちに、具体的な説明をさせていただく機会があると考えています。

しかしながら、リサイクル資材(原料)や製品の更なる利用促進のためには、原料レベルで優れた品質を確保するための努力も重要であり、決して否定されるべきものではありません。リサイクル製品製造者や製品の利用者により安心していただくため、また、下水汚泥焼却灰等の利用用途拡大のためにも、環境安全性評価の基本を理解しつつ、リサイクル資材(原料)の品質向上を図る取り組みも、機会があれば紹介したいと考えます。

<添付資料2> パワーポイント資料「リサイクル製品の環境安全性評価について」 PDF

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