2-1 下水汚泥のエネルギー利用の必要性

(1)下水道事業における大量のエネルギー消費
下水道事業は、公衆衛生の確保、浸水の防除及び水環境の保全に大きく貢献していますが、同時に、下水処理工程で大量のエネルギーを消費し、温室効果ガスを排出しています。
2003年度の我が国の下水道施設におけるエネルギー消費量は、72.6PJで、原油に換算すると190万kLになります。これは、我が国の一次エネルギー総供給量の0.3%になります1)。また、2010年度の下水道施設における電力消費量は、約72億kwhで、国内電力消費量の約0.7%になり、地方公共団体の事業の中では、最もエネルギーを消費する事業であると言えます。
一方、我が国のGDP当たりの一次エネルギー総供給量を1とすると、アメリカ合衆国(2.0)、EU27カ国(1.8)、中国(7.8)、ロシア(16.7)と比較して、非常に低い水準にあることが分かります。また、2008年の我が国のエネルギー自給率は、原発による発電量を含めると18%ですが、原発を除くと4%と非常に低く、ほとんどが、原油等の化石燃料の輸入に頼っているのが現状です2)。このように、エネルギー自給率の低い我が国では、各分野において、エネルギー消費量の削減が求められています。

(2)温室効果ガスの排出
下水道事業では、上述した大量のエネルギー消費に伴い、大量の温室効果ガスを排出しており、2010年度の我が国の総排出量の約0.5%を占めています。特に、図-1に示すように、下水処理場等での電力消費による炭酸ガス排出量が約54%を占め、次いで汚泥焼却による一酸化二窒素(N2O)排出が、21%を占めています。
また図2に示すように、1990年から2008年にかけて処理水量の伸びが約42%であるのに対し、温室効果ガス排出量は、約50%増加しており、下水道事業における温室効果ガスの排出削減が求められています。特に、水処理で使用する電力消費による温室効果ガス排出とともに、汚泥焼却に起因するN2O排出による温室効果ガス排出量の増加が顕著であり、これらの排出量の削減が特に求められています。

図-1 下水道からの温室効果ガス排出量の割合(国土交通省調査)

図-1 下水道からの温室効果ガス排出量の割合(国土交通省調査)

図-2 下水道からの温室効果ガス排出量の推移(国土交通省調査)120227

図-2 下水道からの温室効果ガス排出量の推移(国土交通省調査)

下水道事業に求められる温室効果ガス排出量削減対策については、平成17年2月の京都議定書発効を受け、地球温暖化対策の推進に関する法律第8条に基づき策定される「京都議定書目標達成計画」に盛り込まれており、平成19年度末に改正、閣議決定された本計画には、下水汚泥焼却施設における燃焼の高度化に加え、省エネルギー対策、新エネルギー対策が、追加されました4)。具体的な数値目標は、図-3に示すとおりです。

図-3 下水道からの温室効果ガス排出量の推移と目標達成計画(国土交通省より)
図-3 下水道からの温室効果ガス排出量の推移と目標達成計画(国土交通省より)

(3)エネルギー問題の深刻化
世界のエネルギー需要は今後も大幅に増加すると推測され、世界全体のエネルギー消費量は、途上国の経済成長に牽引されて増加傾向にあり、2030年には2000 年比で約66%まで増加する見通しです1)。また、重要なエネルギー資源の一つである石油の世界全体での可採年数は46年となっており、埋蔵量の77%がOPEC加盟国に集中していることから、中東情勢等の不安定化を受け、昨今の原油価格は高水準で推移している状況にあります2)。したがって、我が国のエネルギー供給源を確保する観点から、省エネを一層推進するとともに、化石燃料への依存度を低減させていくことが必要とされています。

しかしながら、2008年度の我が国の原子力を除いたエネルギー自給率は、4%となっており主要先進国の中でも最低レベルであり、2)福島第一原子力発電所事故後の原子力発電所稼働率低下により、ますます化石燃料の輸入に依存している実態が浮き彫りになっています。

したがって、下水道事業において、省エネルギーの一層の推進とともに、下水汚泥のバイオマス利用の拡大が求められています。